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(前編)環境に優しい重量品リサイクル物流サービスを社会に提供する
『お客さまにとって不要なものが、イコール社会にとって不要なものではない』
「当グループに異動したばかりの頃、『ゴミではなく、廃棄物と呼んでください』と中川から注意されたことがありました」と、大湊氏は苦笑交じりに、当時を振り返る。
今回のインタビュー参加者では一番年下ながら、もっとも長く当グループに在籍する中川氏は、照れながらも、「多くのお客さまは、廃棄物の中にも、有価物として還元される選択肢があることをご存じではありません」とフォローする。
廃棄物を処理するにも費用が掛かる。だが、廃棄物でも有価物として買取ができれば、処理費用を抑えることができる。もちろん、廃棄物として処理するか、価値のある資源としてリサイクルするかでは、環境への貢献度もまるで違う。
「中間処理事業者であるお客さまから『廃プラスチックを燃料としてサーマルリサイクルするための物流』について相談を受けることもあります」と補足するのは、平井氏である。
サーマルリサイクルとは、廃棄物を焼却処理する際に発生する排熱を、エネルギーとして回収する仕組みである。化石燃料を原料とするプラスチック製品を燃料として活用するため、新たな二酸化炭素排出にはつながらない。廃プラスチックを原料として再加工するケミカルリサイクルに比べ、低コストで実施可能であることも評価されるポイントである。
「多くの方に知っていただきたいのは、『お客さまにとって不要なものが、イコール社会にとって不要なものではない』ということです」──宮川健太郎氏は指摘する。
環境に優しくありたいという想いは、メーカーや卸、小売などだけのものではない。物流企業、産業廃棄物処理事業者なども同じ想いを抱いている。
お客さまにとっては不要なものを、いかにして社会貢献へと結びつけていくのか──日立物流 重量機工本部 第二営業部は、日立物流グループとして提供可能な知見とノウハウ、サービスを駆使し、多くの人が抱く環境貢献、社会貢献に対する想いをつなぎ、一つのストーリーとして紡ぐ役割を果たしているのだ。
「環境に優しくありたい」を実現する物流のチカラ
日立物流では、特殊機材を用いて重量品の搬入・据付を行ったり、自社開発した特殊コンテナなどの輸送機材を活用し、廃棄物の輸送を行っている。
「『積地では天井クレーンを使って上部からバラ品のまま積み込みたい』、『卸地では側面からかき出すように下ろしたい』、という各所の要望と我々のノウハウを反映した専用コンテナを開発することで、輸送効率と作業効率を両立したかった」と宮川氏は熱く語る。
ライフサイクルを終えた製品や製造設備が、廃棄・リサイクルといった適切なプロセスを経ることで企業の環境活動に貢献する物流には、決まった方法論がないがゆえの難しさがある。
「機械設備は、その役目を終えた後で撤去され運び出されることを考慮されていません。そのため機械設備入れ替えの際には、撤去や搬出方法に頭を悩ませることになります」と大湊氏は語る。
日立物流では、対象設備の搬出入時には設備の特徴とお客さまのニーズ、そして作業周りの状況をよく把握した上で、長年培ったノウハウと技術力で緻密な分解・搬出・据付作業の計画を立てる。そして、担当するメンバーは現場監督とともに自らも現場に立ち会い、安全且つ効率的な作業遂行につなげている。
■作業風景 (中古破砕機の取り換え作業)
「未知に挑む。」─日立物流が環境と物流に取り組む理由
環境に優しい廃棄・リサイクルの物流には、物流だけではない幅広い知識と経験、実行力が必要なのだ。
次々と生み出される製品やサービスは、私たちの生活を豊かにする一方で、地球環境に深刻なダメージを与えている。
だが、私たちは今さら、この豊かな生活を手放すことはできない。だからこそ持続可能な未来をつかむため、環境に優しい循環型社会の実現を、私たちは果たさなければならない。
「環境に優しい循環型社会の実現は、多くの企業が目指すべきミッションです。しかし、『そのやり方が分からない』と多くの企業が迷い、そして悩んでいます。私たち日立物流は、循環型社会実現に向け、お客さまの悩みや課題から逃げず、最後まで寄り添います。期待を裏切ることはできません」
宮川氏はこのように語る。
「未知に挑む。」──これは、日立物流のブランドスローガンである。製品だけではなく、その製造設備などにも環境に配慮した廃棄、リサイクルが必要なこと。これも、言われてみれば当たり前ではあるが、多くの人が気づいていなかった未知の領域であろう。
環境と物流、まだまだ未知であるこの領域に日立物流がどのように挑んできたのか、本インタビューではその一端をお伝えできたのではないか。
環境に優しい循環型社会の実現にむけて、ますます存在感を増していくであろう、日立物流 重量機工本部 第二営業部 環境営業グループの活躍に注目しよう。
撮影 寺井悠
執筆・インタビュー 坂田良平 プロフィール
Pavism代表。物流ジャーナリスト。
「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。筋トレ、自転車、オリンピックから、人材活用、物流、DXまで、幅広いテーマで執筆活動を行っている。
連載『日本の物流現場から』(ビジネス+IT)他、Merkmal、LOGISTICS TODAYなど、物流メディアでの執筆多数。
※所属部署、役職等は取材時のものになります。