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物流DXで新しい価値を生み出したい。
ジンズと日立物流がたどり着いた結論とは?

想いを共有し、プロジェクトを成功に導くパートナー

メガネブランド「JINS」を展開する株式会社ジンズとともに、倉庫からの出荷情報と配送情報を一元管理するプラットフォームを構築。そこには、効率化だけではない新しい物流の価値があった。株式会社ジンズの三浦祐太氏に話を聞いた。

効率化、コストの削減だけが物流DXではない

物流DXを進めたいけれど、どういったことが提供できるか、というご相談をいただいたことがきっかけでしたよね。

「物流DXで、"ワクワク"するような顧客体験をつくりたい」ということをお話させていただいたと思います。
物流部門で何か新しいことに取り組む場合、一般に効率化やコスト削減を目的とすることが多いかと思います。しかし当社では、毎日のように「ワクワクするような仕事をしよう」ということが語られていることもあり、日立物流さんとのディスカッションの中でも、そういう話をしてきました。といっても、予算には限りがありますし、いま手元にあるデータを活用して、お客さまに還元できるようなことができないか、日立物流さんにはそんな難しい要望をお伝えしていたかと思います。

「物流を通じて、ジンズならではの価値をお客さまに提供したい」というお題をいただき、その思いに応えたい、と思ったことを覚えています。

せっかくやるからには、この仕事を通じて日立物流さんにとっても将来につながるものになったらいいな、という思いがすごくあった。それが今回の取り組みに繋がっています。

ディスカッションの中で、いろいろなアイデアがでましたよね。でもちょっと難しかったり時期尚早だったりと、結構難航したことを覚えています。

そんな中で最終的に取り組むことになったのが、「SCLINK+ Mobile (エスシーリンクモバイル)」でした。
わたしが店舗スタッフとして働いていた時に感じていた「お客さまの欲しい商品が、いつ店舗に届くのかを伝えられない」、という悔しい思いやモヤモヤが根幹になっているんですよ。

株式会社ジンズ サプライチェーンマネジメント本部 ロジスティクス部 三浦祐太氏
株式会社ジンズ サプライチェーンマネジメント本部 ロジスティクス部 三浦祐太氏

店舗からリアルタイムに配送状況を確認したい

導入以前は店舗からの問い合わせに相当、苦労されていたというお話でした。

その通りです。各店舗のバックヤードにあるPCから配送会社の問い合わせシステムを通じて、およその配送状況を知ることはできました。ただ、当時はその荷物の中にどの商品が入っているかは、届いた荷物を開けてみなければわかりませんでした。その日の荷物の具合で、例えば当日配達予定の5箱が1個口で届くこともあれば、4箱と1箱とか、別々に届けられることもありました。
また、お客さまから配送状況の問い合わせがあった際には、確認のため、PCのあるバックヤードに行かなければならず、確認に時間がかかっていました。
すぐに確認できなければ、お客さまを長時間待たせてしまうことになります。

店舗に何度も通わせていただいたのですが、そのような場面をお見かけしたことがありました。

配送状況がわからないのは困りますから、店舗スタッフは本部に問い合わせます。それを受けて、本部のわれわれが物流倉庫や配送会社と細かく連絡を取り合って、状況を確認することも珍しくありませんでした。
当時の確認作業は煩雑だったため、店舗スタッフで対応できないときには、休日でも対応せざるを得ませんでした。

そのお話をお聞きして、驚いたことを覚えています。でも、それだけ緊急性があったわけですね。

目の前にお客さまがいて、届いているはずの荷物が届いていないと、店舗スタッフが焦っている状況がわかりますからね。
配送状況がわかりづらかったのには要因があります。物流倉庫から出荷までの情報と、配送会社への荷物の受け渡しからのトラッキング情報とが、うまくリンクされていなかったからです。
出荷までは、どの箱にいつの注文品が入っているかが「発注番号」によってわかるようになっていましたが、配送会社に荷物が渡ると、今度は配送会社が配送状況を管理するための「トラッキング番号」に変わってしまい、そこからは荷物の中身を確認できない状態でした。

物流業界ではよくあることですが、三浦さんの話を聞いて改善できる余地が大いにあるな、と思いました。

日立物流さんが配送会社である佐川急便さんと提携関係にあったことから、発注番号とトラッキング番号を紐づけするシステムが実現しました。これにより、発注情報と出荷・配送情報がリンクできるようになり、どの箱にどの商品が入っていて、その荷物がいまどういう状況(「倉庫出荷前」「配送中」「配達完了」)にあるのかが、店舗からでも確認できるようになりました。

株式会社日立物流 IT戦略本部 デジタルビジネス推進部 田代肇
株式会社日立物流 IT戦略本部 デジタルビジネス推進部 田代肇

店舗スタッフの協力で、開発スピードもアップ

御社の店舗では、店舗オペレーションのツールとしてiPod touchを利用していますよね。

はい。今回のSCLINK+ Mobileも、バックヤードにあるPCではなく、iPod touchからの利用を考えていました。それが実現できれば、接客をしながら配送状況の確認ができるので、お客さまとのコミュニケーションが途切れません。
問題は、PCとiPod touchの「画面に表示できる情報量の違い」でした。 PCに表示させていたものを、そのままiPod touchで表示させても、使いづらいだけです。ですから、納得のいくレベルになるまで、日立物流さんには何度も作り直してもらいました。

「店舗に対してどのようなサービス改善ができるか」にこだわりました。私も、店舗での業務がどのように行われているか、実際に店頭で何度も確認させていただきました。

当社の店舗に何度も足を運んで頂いたこともあったかと。当社には450店舗、3,000人が働いています。そのスタッフみんなにとって使い勝手のいいものにできるよう、試行錯誤しましたが、想定していたUI(ユーザーインターフェイス)や、良かれと思って表示させていた情報が、店舗スタッフにはむしろ使いにくいということもありましたね。

完成度を上げていくために、店舗スタッフのみなさんの協力は本当に助かりました。

店舗スタッフたちの協力は大きかったですね。各店舗を回って、時間があるときにテスト画面を何度も操作してもらい、「この情報はなくてもいい」、「こうした並びのほうが使いやすい」といった店舗スタッフの声をブラッシュアップに生かしていきました。彼らの協力もあったからこそ、納得のいく画面に仕上げることができたと思っています。

店舗内での利用イメージ
店舗での利用イメージ

想いと課題を共有し、同じ方向を向いて物流DXを実現するパートナー

サービスをローンチしてすぐに、店舗の反応を確認されたそうですね。

当日、当部門のスタッフが各店舗を回って様子を見てきてくれたのですが、「どの店舗からも感謝の声をもらいました」というメールが届きました。
現在では、商品のトラッキングをする、という当初の目的を達成できただけでなく、「ご希望の商品が明日には入荷しますよ」といった情報を伝えることができるようになったことで、お客さまとのコミュニケーションもスムーズになりました。物流の効率化だけでなく、お客さまの店舗体験も改善することができたんです。良いものを作り上げることができたと思っています。

ローンチ後すぐに、嬉しいお話もお聞きしました。

そうなんです。稼働して間もないタイミングで大々的な新商品の発売があったのですが、運悪く大雪の予報が出ていました。以前であれば、降雪時など物流に乱れが生じたときには、全国の店舗から「商品の到着はいつになるのか」「開店までに間に合うのか」、といった問い合わせが途切れることなく入ってくるのが当たり前でしたから、この新システムになっても、ある程度の覚悟はしていました。ところが当日は大雪に見舞われたものの、この新システムで各店舗スタッフが荷物状況の確認をスムーズにおこなうことができ、おかげでトラブルなく、新商品の発売にこぎつけることができました。

株式会社ジンズ サプライチェーンマネジメント本部 ロジスティクス部 JPロジスティクスグループ シニアプロフェッショナル 三浦氏

この取り組みが御社内で高い評価を受け、賞を受賞されたとメールでご連絡いただき、とても嬉しかったです。

当社の社内表彰の中にJINS BRIDGE賞というものがありまして、これは「人を巻き込み、組織や会社の壁を乗り越え、問題解決を行った」ということに対して表彰されるのですが、当社CEOである田中が最終選考を行い、社内全体に共有される少々特別感のあるものなんです。その賞を、今回関わった店舗出身の流通グループのメンバー2名が受賞する運びとなりました。日立物流さんのような社外と協業したソリューションとしては初めての受賞です。

大変光栄です。三浦さんとは、2020年から物流業務のソリューションとして何ができるのか、何度もディスカッションをしてきましたが、振り返ってみて、物流DXをどのように捉えられていますか?

従来からあるデータを見直して活用するだけでも、物流部門を起点にして、お客さまに喜んでもらえる仕組みづくりができます。
パートナーとして、田代さんをはじめとした日立物流のみなさまに、すごく恵まれたと思います。常にわれわれと同じ方向を向いてくださるのが嬉しいですね。いろいろな物流会社へ見学に行かせていただくと、どうしても「荷主と3PL業者」という関係性になってしまって、遠慮されてしまう。節度を持ちながらも、そこを壊していかないと、DXと言う前に、なにも始まらないんじゃないかなと思っています。

現場が何に困っているのか、日々の業務をきちんと理解した上で、アプリケーションではなくソリューションを考えていかないと、本当に必要なものは作れないですよね。

現場の気持ちがわからないと、いいものは作れないですね。日立物流さんとジンズで、お互いに持っているものが相乗効果でさらに良いものになっていった。本当にいい出会いだったと思っています。

そう言っていただいて本当に嬉しいです。今回三浦さんと出会って、ディスカッションを通じてアイデアやアドバイスをいただきながらソリューションの開発ができたことは、当社としても本当に恵まれていたと思います。

他部門を巻き込むプロジェクトにするのは大変かもしれませんが、日立物流さんのようにDX推進力と現場力をもっていて、同じ方向に向かって取り組んでいただけるパートナーとの信頼関係が構築できれば、私たちと同じような取り組みが、どこの会社でも実現できると思っています。

ありがとうございます。今後も協創パートナーとして、物流を通した新しい価値の創造に取り組んでいきたいと思います。

 (左) 株式会社大丸松坂屋百貨店 経営戦略本部 DX推進部 AnotherADdress 事業責任者 田端氏(右) 日立物流 スマートロジスティクス推進部 部長補佐 花輪氏

※所属部署、役職等は取材時のものになります。