電話とファックスに忙殺される、運送会社の受注業務
SSCV-Smartは受発注管理、配車管理、運行管理、会計管理、労務管理、調達管理など、物流会社の視点で必要な機能を網羅した、荷主と輸送事業者のための輸送業務支援ソリューションである。
「一つの運送案件につき、最低2回はファックスを送信します」──そう語るのは、配車を担当する日水運輸株式会社 常務取締役 和地秀典氏である。
電話による案件打診後、配車を実施。受注はファックスで行い、電話で再度確認した後、電話内容を確認するためファックスによる返信を同社では行ってきた。また、深夜配送や待機などの変則的な案件も多く引き受けているという。そうなると見積書のやり取りも増えてくる。
「伝達ミスを防ぐためにファックスは必須です。しかし、ファックスの場合、書面を作成する手間、送信する手間が掛かります。修正があれば、さらにこれを繰り返します」と、和地氏は電話とファックスで案件情報をやり取りする受注プロセスの手間を嘆く。
せめて、メールとPDFにしてくれればとも思うが、相手の事情もあり、和地氏の思い通りにはいかない。
SSCV-Smartは、そんな受注業務に掛かる手間を大幅に軽減したという。
SSCV-Smartによって、受注業務の手間が大幅に軽減
「SSCV-Smartを使ってみませんか?」──きっかけは、日立物流東日本から2020年の暮れに声を掛けられたことだったという。
電話とファックスによる受注業務の煩雑さに辟易していた和地氏は、さっそくSSCV-Smartを利用し始めた。
「これまで電話とファックスで行ってきた受注業務を、システム上で完結できることで、これまで感じてきたストレスや手間を大幅に軽減することができました」と和地氏は、SSCV-Smartを評価する。
同社では、画面上で行うことができる車両の割付や車番変更を利用している。特に車番変更に関しては、頻繁に行うため、業務負荷が大幅に減ったという。
SSCV-Smartは、受注業務に限らず輸送事業における諸業務をインターネット上で完結できる。同社では、例えば見積書に関しても、事前にファックス送信してから、原本を郵送していた。SSCV-Smartを利用すれば、見積書もインターネット上でやりとりできる。
「紙を使った情報伝達は、減らしていくべきですよ。その点で、SSCV-Smartには期待をしています。本当は、電話も減らしていきたいのですが」と和地氏は語る。これまで行ってきた、電話を使った問い合わせや確認は、どうしても慣習上残ってしまうという。
もっとも、SSCV-Smartの活用が進めば、自ずと和地氏を含めた関係者の意識の変化とともに、電話をかける回数も減っていくことだろう。
「電話とファックスの業務負担を減らしたい」、デジタル化へのチャレンジ
日水運輸に限らず、電話とファックスが行き交う運送業界の現状に疑問を感じている運送会社は少なくない。
筆者の知る運送会社でファックスが故障したことがあった。「今日だけは、メールでやりとりをさせて欲しい」──取引先各社に頼んだものの、いくつかの取引先からは「メールは困る」と言われ、結局、コンビニエンスストアのファックスサービスを利用したという。
「ファックスを使って仕事のやり取りをするなんて、今や運送業界くらいではないでしょうか。以前から問題意識は感じていたものの、今までは改善に取り組む機会と方法がありませんでした。
今回、SSCV-Smartの提案を受けたのは、業務のデジタル化にチャレンジする良い機会だと考えています。今は苦労している点もありますが、電話とファックスを減らすため、SSCV-Smartの活用にチャレンジしていきたいと考えています」
SSCV-Smartは、運送会社に対し、日立物流が提供する業務支援の一つである
和地氏に限らず、電話とファックスに忙殺される管理業務をなんとかしたいと考えている運送会社、もしくは配車担当者は少なくないだろう。
だが、改善への意欲はあったとしても、和地氏の言葉どおり「改善に取り組む機会と方法がない」のが、多くの運送会社の現状である。
SSCV-Smartは、実輸送を担う運送会社と、荷主ないし元請事業者をつなぐ、輸送業務支援ソリューションであると同時に、健全な輸送事業を遂行するための武器ともいえよう。社会環境の変化や法改正によって、規制がどんどん厳しくなっていく。そんな中、意図せずに法令違反をしてしまい、業務停止処分により経営に大きなダメージを受けるケースがある。働き方改革や帳簿のデジタル化、コンプライアンスの遵守が求められる輸送事業者にとって、SSCV-Smartは力強い経営支援となるだろう。
インタビューの中で、印象的であった和地氏の言葉があった。
「紙はやっぱりなくしていくべきですよ。紙に頼っていては、将来のデジタル化には対応できないと考えています」
今まで、電話とファックスで受注を受けていて、間違えたことはなかったですか?──少々意地悪な質問を、和地氏に投げかけてみたが、これまで、受注内容を間違えたり、受注が漏れていたといったミスは一度もないと言う。
今回のインタビューで感じたことだが、和地氏はとても優秀で、かつ論理的思考をできる方である。だから、効率の悪い電話とファックスによる業務遂行も、自分なりの間違いのない業務プロセスを生み出し、そして実践できたと推測する。
物流業界に限ったことではないのだが、日本社会は、和地氏のような優れた業務遂行スキルを備えた人材が現場を支えている一方で、古い慣習などが業務改善・効率化の妨げとなってきた。
SSCV-Smartは、自身もトラックを保有し、物流の実業を日々行っている日立物流が、現場から得た経験をフィードバックし、創り上げたソリューションである。SSCV-Smartを利用すれば、日立物流が培ってきた業務改善、業務効率化などの仕組みを活用し、運送に関わる諸業務の標準化を実現できる。
物流DXが話題になるように、物流業界に迫るデジタル化の波は、もはや待ったなしだ。
SSCV-Smartが、輸送業務支援ソリューションとして、物流業界に残る電話・ファックス中心のコミュニケーションを変えていくきっかけとして拡大していくことを期待したい。
日水運輸株式会社について
会社名:日水運輸株式会社
所在地:〒311-0121 茨城県那珂市戸崎40-1
創立:1948年2月
資本金:2,300万円
従業員数:32名
保有車両台数:32台
執筆・インタビュー 坂田良平 プロフィール
Pavism代表。物流ジャーナリスト。
「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。筋トレ、自転車、オリンピックから、人材活用、物流、DXまで、幅広いテーマで執筆活動を行っている。
連載『日本の物流現場から』(ビジネス+IT)他、Merkmal、LOGISTICS TODAYなど、物流メディアでの執筆多数。
※所属部署、役職等は取材時のものになります。